山口ともさん
童謡の作曲家を祖父に、新日本フィルハーモニー/ティンパニー名誉首席奏者を父に持つ。つのだ☆ひろのアシスタントとして音楽の世界に入り、1995年音楽劇『銀河鉄道の夜』をきっかけに廃品から様々な楽器を作るようになる。2003年NHK教育テレビ『ドレミのテレビ』では、ともともの愛称で人気を博した。モットーは、音楽=音を楽しむこと。
渋谷:
今日は、愛称の“ともとも”とお呼びしてもいいですか?
山口:
結構でございます、はい。
渋谷:
楽器を作る時というのは、“これとこれを合わせるとこういう音になる”という発想の元に作られるんですか?
山口:
いや、作ってみないと分からないんですよ。
渋谷:
じゃあ毎回サプライズなんですね!
山口:
そう、全部そう!
渋谷:
ともともの作る楽器もとてもユニークなんですが、ご自身のビジュアルもとても個性的で、もみあげがクルッと完璧なカールになっているんですけども(笑)。
山口:
ありがとうございます。
渋谷:
ともともは日本廃品打楽器協会の会長も務めていらっしゃるんですが、どんなお仕事をされているんですか?
山口:
仕事は私がやっていることが多分そうなんだと思うんですが、日夜、落っこちているゴミとか使ってないモノを楽器に変えて、人様の前で演奏しながら生計を立てている、と言うことなんですけども、誰もいませんよ、会員は(笑)。
渋谷:
あはははは(笑)、そうなんですか!? でもなんで廃品を楽器に…、その廃品に音楽的な可能性を見いだすことができたんですか? 普通だったらバケツはバケツにしか見えないし、缶は缶にしか見えないですよ。
山口:
でもそれを、ちょっとこう、見方を変えるだけで別のモノになったりするのが面白いかなと思って。だから電気の傘は光を散らすための役目のモノかも知れないけど、その役目じゃない可能性だって秘められているじゃない? で、この地球上にあるモノには、全部、音があるんですよ。叩いたり、ひっかいたり。それをすることによって、それの良さというか個性というか、そのモノが持っている音をいかに音楽の中に上手くマッチングさせることができるか? そういう可能性も僕の中のテーマで。ノイズっていう音楽もあったりするじゃないですか。ブリキとかをドンチンカンって叩いてもその中に入っていけば違和感がない楽器になるわけでございます。そういうのを頭にイメージしながら叩くと、その音楽にぴったり合ったりだとか…。要するにパーカッションというのはリズムだけを奏でる楽器ではないと思っているので。そういう意味で全ての可能性を引き出してみたいな、と。
渋谷:
私たちはその可能性を受け入れることを忘れちゃってるのかな…。モノを見て、それは音楽じゃないっていう風に頭から決めつけちゃっているところがあると思うし、でもモノには全て音があって可能性があるっていう言葉は、人間に対しても当てはまりますね。
山口:
そう、全てそうですよ。
渋谷:
うわぁー、素晴らしいですねー! ちゃんとストーリーがあって、もうホントに見えてきました。
山口:
ありがとうございます。なんかね、演奏しているとどんどん自分が入っていっちゃうから、どうしようかなとかあまり考えてないんですけども(笑)。
渋谷:
インスピレーションで?
山口:
うん。なんか、そんな情景があったりしたら素敵だなと思って。
渋谷:
素敵でした! 今すぐその情景にまた戻りたい! 誰かと…(笑)。でも私の目の前を見ると、その情景とは全くマッチングしない楽器があるですけど(笑)。
山口:
雨の音は使い古しの太鼓の中にあずきを入れています。一粒ずつ落とすことで、雨の降り始めの模様をやってみた感じでございます。ザーッと降ってきた雨は、ビーズが40個くらいついたうちわ。これは“どこでも雨”といううちわです。
渋谷:
どこでも雨(笑)。
山口:
カミナリの音は、風船の中に大豆が入ってます。ふくらませて振ると大豆がバーンと鳴るという。そしてカエルの声が、白いけど赤貝の殻。手のひらの中に入れて2つをこすり合わせると音が出ます。
渋谷:
一番驚いたのが、これ。何ですか?
山口:
木琴ですね。“なんでも琴”って言うんだけど、魚屋さんでもらえる“トロ箱”という発砲スチロールでございますね。そのふちに扉用のスポンジテープ、100円ショップとかでも売っているんですけども、それを貼って、そこに木を並べたもの。
渋谷:
私の母親が建設会社をやってるんですけど、その現場に落ちているものですよね?(笑)。
山口:
そうそう。角材も使ってるんですけど、新しくお家を作っているところなんかを普段から見つけて、廃材が出るのを待っています。丸太の木は切ってから良く乾かす。半年から1年くらい乾かさないとこういう音にはならないですね。
渋谷:
カラッとしたいい音ですよね。なんでそんなキレイな音がするの!?信じられない!
山口:
ですからもう、何でもいいんですよ。発砲スチロールの上に叩きたいな、と思うものをこうやって陳列するだけで。
渋谷:
あはははは(笑)。確かにこの材料を見たら、皆さん目を疑いますよ。ともともは日夜、楽器になる可能性のあるモノを拾い集めて、それを触って音を…?
山口:
そうです。あとは地域の人が、「こんなの出たけどいる?」って。
渋谷:
地域の人も協力してくれているんですね(笑)。でも何でも可能性があるって思うとコラボレーションしやすいですよね。
山口:
そうですね。楽器だけじゃなくていろんな人ともね。
◆山口ともオフィシャルサイト >> http://www.terra.dti.ne.jp/ ~tomoyama/
*ライブ情報
8月7日(金)はつみ先生&ともともの「パイプオルガンとガラクタがっきコンサート」@横浜みなとみらいホール
9月1日(火)ブラックベルベッツの新・防災の日~地震・雷・火事・ポチーチ~備えあれば、うれしぃいしぃい@中目黒・楽屋
2009.08.01 O.A
打楽器総奏者/廃品打楽器協会会長
山口ともさん
童謡の作曲家を祖父に、新日本フィルハーモニー/ティンパニー名誉首席奏者を父に持つ。つのだ☆ひろのアシスタントとして音楽の世界に入り、1995年音楽劇『銀河鉄道の夜』をきっかけに廃品から様々な楽器を作るようになる。2003年NHK教育テレビ『ドレミのテレビ』では、ともともの愛称で人気を博した。モットーは、音楽=音を楽しむこと。