バレエダンサー 熊川哲也
北海道生まれ。10歳よりバレエを始める。1987年に英国ロイヤル・バレエ学校に入学。89年に東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団と契約を交わし、数々の著名な賞を獲得。帰国後99年に「Kバレエカンパニー」設立。10月15日から10周年記念全国ツアー新作バレエ『ロミオとジュリエット』がスタート。
渋谷:
こんばんは!
熊川:
こんばんは! お久しぶりです!
渋谷:
夢二!
熊川:
お葉! 7年ぶりですよ(笑)
渋谷:
皆さんにご説明させていただきますと、私と熊川哲也さんは、なんと7年前に『およう』という映画でご一緒させていただいて。
熊川:
そうですね~。わたくし、“竹久夢二”という絵描きを演じさせてもらって。
渋谷:
私は、裸のモデル、“お葉”という役だったんですけども(笑)
熊川:
すごい魅力的でした。
渋谷:
ホントですか?(笑)。今日はバレエダンサーとしての熊川哲也さんにお話を伺いたいんですけども、10歳でバレエを始められたんですか? 早い方ではなかったんですね。
熊川:
そうだね、日本人って習い事をさせる習慣が早い年齢からじゃないですか。3歳、4歳で習い事を始めちゃう感じじゃないですか。でも外国で言うとね、そんなに早くはないですね。やっぱり10歳、11歳くらいに子どもの興味がマックスになる感じで、何か習うにはそのくらいの年齢なんで。
渋谷:
どなたにすすめられて? やっぱり男の子がバレエっていうのは…。
熊川:
特に僕は北海道出身で、バレエなんてあまり身近じゃないですよ。身近であったとしても男の子なんか1人もいないわけ。で、ちょうどたまたま僕のいとこがね、男の子で、バレエを習ってくれていて。それで僕も習い始めたんだけど。
渋谷:
その頃、もっとサッカーをやりたいとか…。「僕、今日はこれからバレエのレッスンだよ」って?
熊川:
「じゃ、タイツ履くのか?」ってみんなに言われて。でも僕も、野球をやったり絵を習いに行ったり、剣道やったりとか、ウチの両親が僕の可能性を引き出してくれるような努力をしてくれたんで、いろんなことをやったんだよね。
渋谷:
やっぱりバレエを続けられたっていうのは、教室に女の子が多かったからっていう理由だったんですか?
熊川:
あはははは(爆笑)。なんちゅう理由だ、初めて聞いたよ、そんな理由は(笑)
渋谷:
でもそうじゃない? 圧倒的に女性が多いし。
熊川:
そんなことないよ、そんな不純じゃないんだよ(笑)。やっぱね、バレエって難しかったわけ。野球とかサッカーって男の子だったら、なんとなくすぐ入り込んで、ルールもそんなに難しくないから初日からできちゃったりするんだけど、バレエなんて、そんな動きするってあり得ないっていう…。それで、難しいんだけど解読でき始めたわけ。それですごく面白くて。ひとつできたら、次、次って、すごく充実したお稽古事だったんだよね。それで気がついたら2年、3年、4年…気がついたらロンドン留学とか、コンクールで賞を取るとか。ホントに気がついたらって感じだったんですよ。
熊川哲也さんのKバレエカンパニー、設立されたのは1999年。10周年になるんですよね。そこでは責任者になって、芸術監督を務められていて、振付師、演出、そしてプリンシパルダンサーでもあるんですよね。そういう立場になってから“大人”を感じましたか?
熊川:
そうだね、あとは、いろんな人が付いてくる…、ダンサーでありスタッフだったりとか、学校の生徒だったりとか。その子達の時間を、ある意味、僕が演出しなきゃいけないし、バレリーナ人生を作っていかなきゃいけない、そういう責任を感じると大人に成らざるを得ない。
渋谷:
成らざるを得ない、結果、大人になった(笑)。新作バレエ『ロミオとジュリエット』ではロミオを演じられるんですよね? ロミオを演じる上で何か心がけていることってあるんですか?
熊川:
ウィリアム・シェークスピアっていう、多分一番有名な作家の物語でディテールもバッチリ決まってるからさ。もちろん当然、演じる人によって違ったものになってくるよ。ただ性格はね、そこまで植え付けられちゃってるから。平和主義だったりとか、そこまで戦闘気分にならない、ロマンチストだったりとか、常に恋に恋してるようなロミオじゃないですか。だから僕と全く逆なんだよね。どちらかって言うと相棒のマキューシオ…やんちゃで常にケンカして。今まで英国のロイヤルでは、そっちの役ばかりやってたわけ。だからそっちの方が地なのかなって思うんだけどね。
渋谷:
そうなんですね。でも今回はロミオで。楽しみですね! でも私思うんですけど、芸術監督をやりながら、ダンサーとして踊っているっていうのはすごく大変なことだと思うんですね。その上でプロデュース、演出、振付けを考えたり、ディレクションしていくっていうのは、もう1日の時間がいくらあっても足りないように思えるんですけど。
熊川:
まぁそうですね。ひとつひとつ区切っちゃうと何役もこなさなくちゃならないってなるんだけど、全部をひとつの役として考えると、意外と器用に時間の割り振りができる…。でも当然、年々自分のケアっていうのは、昔よりもっとやらなきゃいけなくなってきたから、ウォームアップや、ケガのケアとか、そういうところは増えてきましたけど。より充実した時間、バレエと向き合えるようになってきた。今、30半ばなんだけども。
渋谷:
ふーん。
熊川:
またバレエの見方も全く変わってきたしね。20代の時はバレエは自分をアピールする術だったわけ。お客さんに、僕はこういう存在で、これだけすごいことができるんだよって言うのを見せてた訳なんですが、今はどちらかというと踊るのが楽しいからお客さんがいなくても踊ってるだろうな、とか、そういう感覚。そして、バレエに生かされてきている自分が今まであったので、僕に何ができるかって言ったら、バレエに恩返しすること。…っていうのは、ちゃんとバレエを継承して伝えて行くこと。王道を一心不乱にやっていくことだと思うのね。
渋谷:
えぇ。今回の『ロミオとジュリエット』で一番伝えたいことって?
熊川:
自分の中で理想とする舞台演出ができて、その中にハマる自分というダンサーが、満足させてくれればそれでいい。
渋谷:
へぇー。そういう感覚で作り上げていくと『ロミオとジュリエット』というクラシックな物語も、熊川さん流に新作バレエとして作り上げて、私たちの期待に応えるというだけじゃなくて、予想外のことを見せてくれる舞台になるような気がしますね。
熊川:
新作ですから、みんなのモチベーションも違いますし、あと、ヨランダ・ソナベンドという美術家の方が素晴らしいセットと衣装を作ってくれるので。ホントに14世紀、15世紀辺りの時代の話がものすごく得意ですから。舞台はホントに3Dのように見えるから、すごい臨場感が生まれる作品になっていると思います。
◆Kバレエカンパニー >>http://www.k-ballet.co.jp/index_02.html
熊川哲也Kバレエカンパニー 10周年記念全国ツアー新作バレエ『ロミオとジュリエット』
10月15日~18日@Bunkamuraオーチャードホール
10月20日@神奈川県民ホール
11月3日~8日@東京文化会館大ホール(*5日は休演)
お問い合わせ:03-3234-9999(チケットスペース)
2009.10.10 O.A
バレエダンサー 熊川哲也
北海道生まれ。10歳よりバレエを始める。1987年に英国ロイヤル・バレエ学校に入学。89年に東洋人として初めて英国ロイヤル・バレエ団と契約を交わし、数々の著名な賞を獲得。帰国後99年に「Kバレエカンパニー」設立。10月15日から10周年記念全国ツアー新作バレエ『ロミオとジュリエット』がスタート。