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ゲスト 090613 アーティスト 日比野克彦さん

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2009.06.13 O.A
アーティスト
日比野克彦さん

1958年岐阜市生まれ。東京芸術大学在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催する他、パブリックアート・舞台美術など、多岐にわたる分野で活動中。近年は各地で 一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行っている。現在開催中の「開国博Y150」(横浜)のアートプロデューサーとして「横浜FUNEプロジェクト」を手がけると同時に「明後日朝顔プロジェクト」も実施中。

『30億、40億人の世界中の人達に見てもらいたいわけですよ』

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渋谷: 日比野さんは、開国博Y150のアートプロデューサーとして「横浜FUNEプロジェクト」というのを手がけていらっしゃるんですよね。どんなプロジェクトなんですか?

日比野:
横浜市民のみんなで船を作って行こうと。まぁ実際に浮かぶ船じゃないんですけども、段ボールを使って150年の数字にかけて、150艘の船を…。この150年間の間に横浜港にいろんな言われのある船を作って行こうというプロジェクトですね。

渋谷:
いつ頃から作り始めているんですか?

日比野:
2年前ですね。もう足掛け3年になりますね。

渋谷:
へぇー。今はどのくらい完成しているんですか?

日比野:
今は135艘くらいですかね。会期終了までには150艘を。ついこの間、1ヶ月間くらい、大さん橋に展示したんですけども。その時に121艘を展示しましたね。

渋谷:
じゃあ、結構いいペースで完成されていってるんですね。

日比野:
はい。夏休みが一番、ワークショップとかが多くなる時期なんですけど、今も週末に、いろんな区民センターとか、赤レンガとか、パシフィコとか、いろんな人が集まるところでやっていて。今まで100ヶ所以上で、1万人を超える人達と一緒に作ってきましたね。

渋谷:そんなに多くの方々が携わっているんですね。

日比野:
一番最初に「Y150」をどんな展覧会にしようかなっていう時に、アート的なところで言えば、1人の著名な作家の作品を置くというのもひとつの表現かもしれないけれども、なるべくたくさんの手数が集まることによって見えてくるもの…市民参加型っていうことですけれども、みんなで作って行こうという、そういう仕掛けをしていくひとつの表現の手段として、じゃあ、150艘の船をみんなで時間をかけて作って行きましょうというのが、今回のプロジェクトですね。

渋谷:
わぁステキ! 参加されているのはごく一般の方々なんですか?

日比野:
一番最初は、私と数人のスタッフが、まず横浜に乗り込んで、そして「船を作ろう」と呼びかけて。最初は5,6人ですかね。参加者は、社会人もいれば、主婦の方もいるし、学生もいたりするんですけども、そういう人達に船の作り方を教えて、まずはメインクルーを育てなくちゃいけないですよね。それでクルー達が増えて来たら、そのクルーがいろんなワークショップ会場に乗り込んで、その地域のボランティアの人達と一緒に作って行くと。それで地域のボランティアの人達が作り方を覚えてくれたらクルーに入ってもらって、またいろんな地域に飛んでいってもらう。今だと50人くらいのクルーがいて、それぞれが各地域に行ってワークショップを行っているんですね。

渋谷:
関わっている人達がクリエイティブな発想を持って作っていくという…。

日比野:
みんなでスケッチを描くんですが、その前にまず、今日はどんな船を作るかを決めるんです。実際に横浜港に入港した船とか、歴史上、横浜に関係のある船とかね。例えば、エリザベス号っていう船は何万トンの船で、全長何メートルで、こんな特徴がある船だってことをみんなで勉強して、それからスケッチをして。それで、みんなのスケッチの面白いところを集めて船を作って行くんですね。

渋谷:
すごいユニーク!

日比野:
できた船を実際に見てもらうと分かるんですけど、バラバラなんですよ。みんなのアイディアがあるからバラバラで、ひとりの人間が150種類のアイディアを出すってなかなか難しいですよね。

渋谷:
Y150のホームページに、完成した船の写真が載っているんですが、ホントにユニークで自由な発想なんですよね!

日比野:
でもバラバラがいいっていうわけじゃないですよね。バラバラだけれども、ちゃんと統一感がないと、会場に見に来た人達にインパクトを与えないんですよ。この辺がまた難しいところで。個性っていうのは、協調性がある中でのちょっとしたズレが個性になるわけで、全員が反逆者だとまとまらないですよね。

渋谷:
個性をつぶし合っちゃう(笑)

日比野:
ですから、個性を出しながら統一感を持たせるっていうのが…。例えば色のコントロールだとか、形、サイズのコントロールとか。自由にやってもらうんだけれども、そこはディレクションっていうのは必要ですよね。

渋谷:
それが、まさに日比野さんの、アートプロデューサーの役割なんですか?

日比野:
そうですよね。最終的に大さん橋で…、関わった人達は1万人だけれども、見てもらいたい人達は300万人以上の、もっと言えば1億人の日本中の、もっと言えば30億、40億人の世界中の人達に見てもらいたいわけですよ。だから見てもらった時に自分たちのやりたいことが伝わらないと、それはアートにはならないですよね。だから個性をきちんと伝える手段ということでは、やっぱりアートプロデューサーとしての役割はありますよね。



『美術の本随っていうのは、やっぱり気持ちの部分』

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渋谷: 日比野さんは「横浜FUNEプロジェクト」の他にもうひとつ「明後日朝顔プロジェクト」というのにも力を注いでいらっしゃいます。

日比野:
「明後日朝顔(あさってあさがお)」という名前を付けているんですけども、種をどんどん広げていこう、伝えていこうっていうもので。朝顔っていうと、どうしても花をイメージしますよね。でもこのプロジェクトの一番大事なところは種なんですよ。

渋谷:
種!?

日比野:
種を収穫した時に、この夏に育てたいろんな思い出が、この種の中に入っていると。いわゆるメモリースティックですよね。この種をひと冬越して、また来年の5月とか6月に植えると、また去年と同じような風景が再現されるっていう。その記憶を1個の種にとどめてくれる。そして、違う土地にその記憶を運んでくれるっていうことが、明後日朝顔プロジェクトの一番重要なところで。

渋谷:
ほぉー。

日比野:
「FUNEプロジェクト」の船と種は、僕の中でつながっているんですけども、船って、いろんなところから運んできてくれて、今、身の回りにある日用品だとか、考え方だとか、ヘタしたらこの身体までも、大陸から海を渡って、日本のこの小さな島にやってきたわけですよ。船はいろんなものを運んでくれる。種もいろんなものを運んでくれる。種は船みたいだな、って。いろんなものを伝えていく、つないでいく、土地と土地、人と人、時代と時代がつながっていくっていうところのプロジェクトが、明後日朝顔プロジェクトっていうものですね。

渋谷:
これはどこの地域で行われているんですか?

日比野:
今年は22の地域なんですけども、一番最初に始まったのは2003年の新潟の十日町市で始まったんですけど、その時は、これだけ地域を広げて行こうっていう意識はなくて、地元の山間部で「大地の芸術祭」っていう大きなイベントがあったんですけども、僕もそこの一参加アーティストとして入って、廃校になった小学校を舞台にして、地域の人達と一緒に何か作れるものは無いかな? って、おばちゃん達と話している中で、じゃあ朝顔でも育てましょうか? っていうことで始めたんですよね。

渋谷:
そんなひょんな会話の中から生まれた発想だったんですか。

日比野:
それで秋になったら種がとれて、その種がいろんな人にもらわれていったりだとか。そうすると、また次の年に花が咲いた時に、去年、新潟で見た風景が田舎でも見ることができましたっていうお手紙をもらったりとかすると、人と人、土地と土地がつながるように、だんだんなっていって。それで「明後日朝顔プロジェクト」という名前が生まれてきたんですけどね。

渋谷:
日比野さんが携わっていることって、今日、明日に結果がでるものではなくて、かなり時間をかけてやるものが多いですよね。

日比野:
そうですね。持続性のあるものにしていかないと、それは広がらないって言うか、育っていかないと思うので。美術館でやる展覧会っていうのは、初日があって最終日がありますよね。ものが運ばれて、展示されて、搬出されて終わるっていう。でも人間の気持ちっていうのは、スイッチをオン・オフするように、はいこれで終わり! っていう風には終わらずに、そこの気持ちはずっとそこに残ったり、次に引き継がれたりする。だから美術っていのは物質じゃなくて、気持ちの部分であったり、と思うので、たまたま自分の気持ちを具現化するものが美術であって、美術の本随っていうのは、やっぱり気持ちの部分…だから気持ちと一緒に美術も進んでいかなくちゃいけないなって言うことで、続くものが多いですね。

渋谷:
それが日比野さんにとっての美術なんですね。


information

■日比野克彦さん >> http://www.hibino.cc/

■開国博Y150 >> http://event.yokohama150.org/

■明後日朝顔プロジェクトは、旭区誕生40周年記念事業イベントとして、
 よこはま動物園「ズーラシア」及び、7/4〜Y150 ヒルサイドエリアで行われます。
 旭区>> http://www.city.yokohama.jp/me/asahi/

together090613_01.jpg2009.06.13 O.A
アーティスト
日比野克彦さん
1958年岐阜市生まれ。東京芸術大学在学中にダンボール作品で注目を浴び、国内外で個展・グループ展を多数開催する他、パブリックアート・舞台美術など、多岐にわたる分野で活動中。近年は各地で 一般参加者とその地域の特性を生かしたワークショップを多く行っている。現在は「開国博Y150」のアートプロデューサーとして「横浜FUNEプロジェクト」と同時に「明後日朝顔プロジェクト」も手がけている。

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2009年06月12日 11:11に投稿されたエントリーのページです。

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