
フリーライター 金子由紀子さん
1965年生まれ。出版社勤務ののちフリーに。現在は、ポータルサイト『All About』にて「シンプルライフ」のガイドも担当。主な著書に『持たない暮らし』『買わない習慣』(アスペクト)。3月1日には、気軽にできる“小さな農業”についてのエッセイ『自分で育てるシンプルライフ』(家の光協会)を上梓。
渋谷:
金子さんが提案していらっしゃる“シンプルライフ”というのは、どんな暮らしなんですか?
金子:
普通に都会で暮らしていて、その中で取捨選択して、本当に好きなもの、必要なものだけ持つようにすれば、もっと気持ちよく暮らせるんじゃないかなっていうことを書いています。
渋谷:
金子さん自身もモノを減らすことによって、ストレスから解放されたりという経験があるんですか?
金子:
そうですね。ミニマムな暮らしに憧れていたんですけど、現実の生活はどうしてもモノが増えていくんですよね。それで“何でこんなにゴチャゴチャしてるんだろう? 片付けが下手だからかな?”とか悩んでいたんですよ。結婚して子供が産まれるとさらにしっちゃかめっちゃかになって毎日イライラしてたんですよ。
渋谷:
はい。
金子:
ある日“もうダメだ!”って。一大決心をしてモノをずいぶん処分したんですよ。そしたらものすごい楽になったんですよ。
渋谷:
じゃあ、生活の中にモノが多かったことによって自分に付加がかかってた、と。
金子:
モノが多ければ片付けなければならないし、モノそのものも手入れしたり管理する手間が必要ですよね。モノが無くなったらその手間もなくなるんですよ。だから時間も増えましたね。
渋谷:
モノが多ければ自分の時間を、そのモノに費やす必要があるんですものね。それをしないとどんどん散らかって行くし。
金子:
だからモノがたくさんあるほど便利だって思ってたんですけど、まぁ便利は便利なんですけど、その見返りとしてそのモノ達のお世話をしなければいけないんだってことに、やっと気がついたんですよ。
渋谷:
モノのお世話をしなきゃならない。
金子:
世話をしたくないので持たないっていう(笑)。そういう風にだんだんシフトしましたね。
この春から新生活をスタートする方もたくさんいらっしゃると思います。シンプルライフを送るためにはどんなところから始めたらいいですか?
金子:
初めて一人暮らしをされる方は、1枚の板と気に入ったスツールを一脚だけで生活を始めるといいんじゃないかと思うんですよ。それで1年くらい生活してみるといいかなと思います。
渋谷:
え、それはどうして?
金子:
一人暮らしの最初に手に入るようなモノって、多分2年か3年しか使えないんですよね。飽きが来るし。だったら本当に欲しくなるようなイスやテーブルが現れるまでお金を貯めながら探す。
渋谷:
確かにそうですよね。一人暮らしを始めることで生活がどんどん変わっていって、新しい自分に気づくことがあると思うんですね。自分の生活がまだ分からない状態で買うより、分かって来てから手に入れられるものを身近に置いた方がいいような気がしますよね。
金子:
自分らしさとか、自分が好きなものって分かっているようでまだまだ分かってないんじゃないかなと思うんですよ。ですからもうちょっと成長してから(笑)。
渋谷:
片付いた部屋を維持していくには?
金子:
日本の家って靴を脱いで生活しますよね。そのせいで床にモノを置いてしまいますよね。買い物バッグとか洋服なんかも。ですから“床にモノを置かない”っていうことを徹底されると散らかる速度がぐんと遅くなりますね。
渋谷:
床にモノを置かない。
金子:
あと試していただきたいのが、花を一輪だけ買って来てそれをなるべく枯らさないようにお世話する。それができるようになると、片付けとか意識しなくても自然に部屋が片付いていくんですよ。
渋谷:
魔法のような方法! 一輪でいいんですか?
金子:
鉢植えとか花束とか、生け直したり、水やりが面倒なものではなくて。一輪だけなら水を変えるのも簡単ですよね。それに一輪だけ花があるとどういう訳か部屋の中が片付いていくんですよ。
渋谷:
心の状態がそのまま部屋に表れて行くような……。散らかり度でその時の自分の心が分かってくるという(笑)。そして金子さんは3月1日に『自分で育てるシンプルライフ』という本を出されたんですよね?
金子:
この本は、食べること、それから、それを作っている農業……、自分で植物を作って育てるということが実はシンプルな暮らしを作ることと密接な関係があるんじゃないかなと思って書いた本です。
渋谷:
すごく興味がありますね。私もこれから読ませていただこうと思います!
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